こんにちは。神奈川県大和市の印刷・企画・デザインならおまかせのアドタックです。
未だコロナ禍は続き、外出もあまり大手を振って出来る状況とは言い難いです。
そんなステイホームが推奨される今だからこそ、読書をする時間がたっぷりとあります。
今回は自分のおすすめ書籍を紹介したいと思います。
赤瀬川原平著『超芸術トマソン』です。
この本に出会った詳しい経緯は失念しましたが、学生時代アートにかぶれ、
ドイツの前衛芸術運動フルクサスが入り口だった気がします。
トマソンとは「不動産に付属し、まるで展示するかのように美しく保存されている無用の長物。
存在がまるで芸術のようでありながら、その役にたたなさ・非実用において芸術よりも
もっと芸術らしい物を「超芸術」と呼び、その中でも不動産に属するもの」
名前の由来はかつて読売ジャイアンツに在籍したゲーリー・トマソンという選手。
かつてはメジャーリーガーで、高給で迎えられ期待されましたが、
まるで活躍出来ずベンチに張り付いていたそうです。
赤瀬川氏はそんな「獲得したが戦力にならない」というところに
「存在はするが役に立たない」という意味を見出し、
街中で見つけた不可解な建造物にトマソンと名付けます。
よく自然のつくる芸術と言われる奇岩や滝、氷柱などありますが、
トマソンは人の手で、芸術として創られていない「自然の」芸術なのです。
そんなトマソンの一例を紹介します。
何故か外壁についたドア。非常口の予定だったのでしょうか。
壁にめり込んだ蛇口。
これは高田馬場に存在したトライアングル地帯。今もあるのでしょうか。
このように街中で見かける不可解なものを紹介していく書籍なのです。
また、こういったトマソン群について赤瀬川氏の考察が書かれており、とても仰々しくて面白い。
こういった「ストリートアート」を散歩がてらに見つける、というのも
素晴らしいフィールドワークではないでしょうか。
あなたの街のトマソンはきっとすぐ近くにあるはず。
今まで気にしなかった通りもアートで溢れているかもしれません。
最後に氏は、こういった言葉で締めています。
「これからの超芸術トマソンがどうなるかわからない。わかっているのはなるようになるということ。
この世の中のなるようなところでトマソンは生れ、そして消えていっている。
それをひたすら見ることによって美の価値を生み出す超芸術の構図は、
あまりにも神々しい状態だと思わないでもない。
この、指先さえも触れずに意識だけが美を創り出す関係は、
何かこの世の奇跡を予感させるものでもあるのだ。
しかし、まあ、世の中のもろもろの生活の方はともかくとして、
トマソンというのはどう考えたってなるようにしかならないわけで、
そこがさすがはトマソンである。」
〈T.S〉